橈骨神経麻痺(下垂手・下垂指)

橈骨神経とは、頚椎(首)から出ている腕や肩周りを支配している神経の束(腕神経叢)の枝分かれした神経のうちの1つです。

頚椎から始まり鎖骨の下に潜り込み、腋窩(脇の下)を通り上腕の外側に回り込んで前腕外側を下りていきます。

橈骨神経は前腕外側から手の甲・親指と人差し指の感覚、手首を反らすための前腕伸筋群を支配している神経です。

交通事故や肩関節の脱臼、転倒した際に手を強く着いた等で負傷しやすく、

好発部位は以下の3つとなります。

①腋窩(脇の下)
②上腕骨中央部
③前腕部   

腋窩での橈骨神経損傷は、肩関節が下方に脱臼すると起こりやすいです。

橈骨神経に限らず、神経損傷は半年間でどの位の回復ができるかがポイントとなってきます。

半年後までに回復した状態がそのまま後遺症として残ってしまう可能性が高いので、

早めの治療、リハビリがとても重要な疾患です。

症状


◎腋窩(脇の下)や上腕中央部での損傷した場合

  • 下垂手・・・手首の背屈(伸展)機能不全と、親指・人差し指・中指の付け根の伸展機能不全
  • 前腕外側の感覚障害
  • 手の甲の感覚障害
  • 親指、人差し指、中指、手首の感覚障害

◎肘関節の屈曲で損傷した場合

  • 下垂指・・・指の付け根の伸展機能不全

当院の考え


橈骨神経に限らず、神経症状は何かの影響で神経自体が圧迫を受けていたり、引き伸ばされたり、挫傷したり、切断されたりする事で神経伝達が阻害され、その神経が支配している感覚機能や運動機能が正常に働かない事だと考えております。

神経がどのような損傷を受けているのかを把握し、そこを改善してあげる事で神経伝達が通りやすくなります。

また、阻害された神経伝達はすぐに回復する事は稀であるため神経伝達を促す治療も重要であると考えております。

当院での治療


①手技

橈骨神経の通るラインである首→腋窩→上腕外側→前腕外側を徒手療法でほぐしていき、神経伝達を妨げている要因にアプローチします。

姿勢の歪みもあると、神経の圧迫や牽引に繋がるので状態に合わせて全身的にアプローチする場合もございます。

 

②鍼治療

鍼治療も血流を促進させ筋肉を和らげる効果があるので、手技同様に神経伝達を妨げている要因にアプローチをします。

橈骨神経に対しては、上腕外側で橈骨神経に触れられる場所があるのでそこに鍼を刺し、パルス(電気)を通電する事で橈骨神経が支配している筋肉を電気の力で動かす事、神経伝達を促す事を目的として行います。

 

③リハビリ

麻痺を起こした橈骨神経は、手関節(手首)を反る動きに作用する前腕伸筋群に力を入れられなくなり、筋収縮が出来なくなります。

鍼に通電している時に電気によって筋収縮を強制的に起こし、そのリズムに合わせて前腕伸筋群を使う意識をさせます。

他動で手関節を動かし筋収縮をする感覚を覚えさせます。

少しずつ筋肉に力の入れ方が再教育されて来たら、他動で手関節を反った状態に持っていき、その状態をキープするように力を入れます。

キープできるようになってきたら自分で手関節を曲げたり伸ばしたり動かしていきます。

尚、指は動かす事が出来る事が多いので指が動かせるようであれば、初期の段階から柔らかいボールを握ったりする事も前腕に刺激が入り良い効果に繋がると考えております。